引き戸はそれが分けている2つの領域のどちらも侵さずに境界線上にとどまって、どちらが内でどちらが外かということに一種の中立性を保っているし、開かれれば視界から消える、という特徴があり、日本人の室内感覚ではこれらの控え目というか、建具としての自己主張の無さが好ましく思われる場合も少なくない。引き戸にはこのような長所もあるが、かと言って引き戸が良いことだらけだ、と断定するのは早計である。引き戸の基本型は二枚建ての引き違いである。
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これには左右どちらも開けられるという便利さもあるが、実際にそういう使われ方をされる場合は少なく、たいていは、左右どちらかの半分だけか日常的に開けたてされている。となると、引き違い戸は、たとえば3尺(約90センチ)の幅の出入口のために、その倍の6尺の壁を占拠してしまうことになる。言い替えれば、開けたてされない方の建具の占める3尺幅の壁は、壁として死んでしまう。これが3尺幅のドアであれば、残りの3尺は壁の広がりの延長として生きてくる。壁が生きる、ということは、そこに絵を飾ったり、家具を並べたりすることができるばかりではなく、収納家具をつくり付けにすることもできる。